アキバ博士の食農教室
AKIBA-HAKASE

宇宙で農業はできるの?

2022.03.31

宇宙で農業はできるの?

火星で可能か研究中

(C)こぐれ けんじろう・画

 宇宙で農業はできるのか? 普段、わたしたちは、何気なく呼吸し、ご飯やパン、肉、魚、野菜、果物などを食べて生活しているけれど、それは地球が資源の豊かな星だからできることなんだ。気温や水、光などの環境が、ぜんぜん違う宇宙ではどうなんだろう?

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は現在、火星で農業ができないか、研究中だよ。火星は地球のすぐ外側を回る惑星だね。でも、宇宙船に乗って往復するのに、なんと3年もかかるんだ。大量の食物を宇宙船に載せて持っていくのは大変だから、火星で農業をして、食べ物を作ろうとしているんだよ。

 火星は地球と比べて直径は半分なんだ。火星の地表面の気温は20度~氷点下130度(平均で氷点下55度)、重力は地球の3分の1で、日射量はおよそ半分。1日の長さは地球と同じだけれど、1年は地球の2倍。大気は160分の1しかなくて、9割以上が二酸化炭素だ。地表面は主に玄武岩と安山岩の岩石でできている。このままでは、農業はできないよね。

 そこで、現在考えられているのが「温室ドーム」なんだ。ドームをフィルムで覆い、植物の光合成に必要な光を通し、危険な宇宙線や紫外線などを弱めるんだ。フィルムを何層も張って、隕石(いんせき)が当たってもすぐには、壊れない構造にするんだ。

 ドームの内側は酸素や窒素を加え、植物が生育できるようにするよ。火星の南極には氷があるんだ。さらに、地下深くには水が流れていると予想されているよ。その水を循環させて農業や生活に使うんだ。

 栽培するのは米、大豆、サツマイモ、シイタケなどだよ。実験できちんと栽培できることが確認されているんだ。でも、肉や魚、卵も食べたくなるよね。そこで、桑を栽培して桑の葉を餌に蚕を飼って、蚕のさなぎを食べるんだ。

 蚕を食べるのは、ちょっと嫌という人もいるかもしれないね。でも、カニみそみたいで、おいしいんだよ。桑の木は盛んに成長して酸素を作るしね。料理で出た生ごみや、排せつ物は堆肥(たいひ)にして畑に戻せば、無駄のない農業ができるね。

 ごみをまったく出さない農業ができるようになればすごいね! 地球でも応用して、砂漠や高山などでも使えるよね。僕もいつか宇宙で農業してみたいなぁ。

(取材協力=宇宙航空研究開発機構の山下雅道氏