アキバ博士の食農教室
AKIBA-HAKASE

カマキリ 産卵場所どう決める?

2022.03.31

カマキリ 産卵場所どう決める?

雪の量 予測してから

 朝晩めっきり寒くなってきたね。僕の家では、こたつを出したよ。夏から秋にかけて活動していた昆虫たちの姿も、見えなくなってきたね。昆虫たちはこの時期、子孫を残そうと卵を産むよ。この前、カマキリの卵を見つけたけれど、卵を産む場所って、どうやって決めているんだろう。

 カマキリの卵は、卵鞘(らんしょう)というスポンジ状の袋の中に数百個入っているよ。卵鞘の大きさは3~5センチで、外からの衝撃から卵を守っているんだ。卵鞘は、木の幹や枝、草の茎などに産み付けられているよ。カマキリの種類にもよるけれど、地上から50~250センチの高さにくっついているんだ。

 昔から、卵鞘の位置が高いと、その年は雪が多いという言い伝えがあるよ。雪に埋もれない高さに卵を産むということだね。研究者の報告の中にも「カマキリは、その年の積雪を予測して卵を産む」というものがあるよ。

 この報告によると、カマキリは木の内部にある「弁」の位置に卵を産みつけるんだ。木は、日が照って、自分の体の水分が少なくなると、土壌から水を吸い上げるよ。弁は、吸い上げた水が一定の位置から下に落ちないようにするんだ。土壌に水分が十分にあれば、いつでも水分を取り入れられるから、弁は低い所にあるんだ。反対に、土に水分が少ないと、弁の位置を高くして、吸い上げた水分を高い位置に確保しているよ。

 地球全体の水分の量は決まっているんだ。地面が乾いて水分が少ないと、大気中の水分量が多くなるから、大雪が降る可能性が高いということになるね。カマキリは、木の性質から、数カ月後の雪の量を予測しているんだね。

 研究では、地球から発生する振動が木の幹や枝に伝わることを確認したよ。人の耳には聞こえないけれど、測定器を使って調べたら、振動が一番よく聞こえる所と、卵鞘の位置が一致して、積雪の高さも関係していることが分かったんだ。

 春が近づくと、だんだん振動が大きくなるよ。雪が溶けて暖かくなると、さらに振動が大きくなる。振動を合図に卵がかえるんだ。
今度、雪国の友達にカマキリの卵が、どれくらいの高さに産み付けられているかを聞いて、今年の雪の量を予測してみるよ。

(取材協力=イートラスト特別顧問・工学博士 酒井與喜夫さん)