アキバ博士の食農教室
AKIBA-HAKASE

野生のエノキ 栽培すると変身するの?

2022.03.31

野生のエノキ 栽培すると変身するの?

純白系種菌だからさ

(C)こぐれ けんじろう・画

シャキシャキした歯触りのエノキタケ。自分の味を強く主張しないけれども鍋物料理には欠かせない食材だよね。ところで、野生のエノキタケを見たことがあるかな?

 野生のエノキタケは茶褐色で柄は短く、かさが大きい。柄の根元は黒いビロード状の毛で覆われている。お店で買うものは白くて、ひょろひょろっとしているから、まるで別物だね。

 本当は茶色いきのこなのに、売っているものは何で白いのだろう?

 「もやしのように暗いところで光を当てずに栽培しているから」と思うかもしれない。でも違うんだ。確かに昔はそういう栽培があったのだけれど、今、栽培されているエノキタケは、光を当てても茶色くならない品種を採用しているから白いんだよ。

 白いといっても、人工栽培が始まったころは、クリーム色がかったものだったんだ。ところが、消費者が白い方を好んだために純白系の種菌が開発されて、出回るようになったんだよ。

 じゃあ、ひょろひょろっとした形になったのは、なぜだろう?

 野生のエノキタケは晩秋から早春にかけて榎(えのき)の切り株などから発生する。ところが市販品は全然違う。エノキタケの農場は、農場というよりは、まるで工場。なんと、プラスチックの瓶で栽培されているんだ。

 おがくずや米ぬかなどが詰められた培養瓶に種菌を植え、さらに瓶の口を紙で巻いて筒状にして栽培する。すると、きのこ周辺の二酸化炭素(CO2)の濃度が上がり、かさの成長が抑えられるから柄の部分が細く長く成長し、ひょろひょろとした形になるんだ。

 換気や温度、湿度などの環境をコントロールする空調設備が整った部屋で一年中栽培しているところも多いんだよ。

 ところで、きのこは毒きのこの見分けが難しいものが多いんだ。店で買うのが一番安全だけれど、きのこ狩りをしたい時は、専門家と一緒に行くようにしてね。

(取材協力=長野県野菜花き試験場、JA中野市)